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【エル・トポ】ホドロフスキーが贈る、神秘的且つ異色なウェスタン

J.Stone J.Stone

1970年公開、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の描く、神秘的且つ芸術的なウェスタン。 あのジョン・レノンや、ミック・ジャガーが絶賛したという作品を今回は取り上げる。

ホドロフスキーが贈る、神秘的且つ異色なウェスタン…エルトポ

映画ファン(通称:シネフォル)が挙って名作と掲げているエルトポを遂に観た。
監督はアレハンドロ・ホドロフスキー。南米チリ出身の個性派作家だ。
企画倒れとなった幻の名作『デューン』や、2013年公開の『リアリティのダンス』で有名な映画監督である。

非常に個性の強い監督だとは聞いていたが、私の想像を遥かに裏切った。
はっきり謝っておこう。キューブリック作品で個性強いとか思ってたにわかでごめんなさい。

そう、この監督の作品…とくにこのエルトポはキューブリック映画など屁でもない程にアクが強い。
ウェスタンであるのだが、題材は宗教観や死生観的な要素が漂い、どこか神秘的で現実感のない世界観である。
イーストウッドやジョン・ウェインが主役の乾いたウェスタンが好きな人にとって、本作は非常にウェットかつマッドに映るだろう。
(音楽ジャンルに例えるならばアシッドサイケかそれ以上だ。)

そんな映画の感想を今回はお届けする。

純粋なウェスタンは見るな!

エルトポは前半がウェスタン、後半に懺悔という二部構成になっている。
さらに言えば、神秘的・宗教的概念も前後半でどうも違ってくる。

前半はキリスト的で、ある種欧米に根強い独善的な立ち回りが目立つ。
しかし後半になると途端に仏教的思想が強くなり、自己犠牲的・無間道的精神が目立つようになる。
神のような鉄人になりたかった男が、人間というありのままの弱さを受け入れ立ち向かう…というテーマが大よそ似合うだろう。

さて、純粋なウェスタンファンは見るなと書いたが、
冒頭でも書いたように、この映画はあまりにもウェットすぎる。
登場人物はヒーローでも何でもないし、勧善懲悪なお決まりのプロットも存在しない。
映画の展開も現代の映画や、クロサワプロットに慣れてしまった我々にはどこか衝動的なカットや展開が多い。

事実、事態を把握できぬまま次のシーンに移行してしまったり、
とにかく説明不足すぎて、なにがしたいのか行間を相当に想像しなければ理解する事はできないだろう。
このことから、この映画は理解してみるタイプの映画でない事は、冒頭数分で大よそ理解できる。
そして、理解できないという映画の系統から、説明的表現や商業的デザインのなされた映画を見慣れてしまった大半の方には受け付けにくい映画となっている。

ウェスタンファンならばなおさらである。
ウェスタンははっきり言って、「お決まり」があるからだ。
これは時代劇にも言えることだが、このお決まりがあるからこそ、ヒーローの勇士を見届けられるわけだ。

更に、キャラクター設定も非常に変態的だ。
まず、まともな人は…まあ出てこない。
突然レズビアン描写や裸体などが登場するし、そういったセクシャルな演出が非常に多い。
そしてキャラクター自体も、そういった要素を多く含んでおり、作者のナルシズムを伺える部分が見られる。

理解し難く、いや理解するタイプの映画ではない…。
但し、抽象画的芸術作品のような難解さとはまた違う、なんとも独特な作風である。

エルトポから感じた要素

まず、画面内の配色はキューブリックに近い。
寒暖の協調や、ピンクや水色などがポッと画面に入る事で、奇妙な世界観を作り出している。
キューブリック作品でも「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」等で同様の仕掛けを多くみることができる。
非常に芸術色の強い作家であることがうかがえる。
事実、ホドロフスキー監督自身、バンドデシネなどの漫画作家としての一面も持つ。
アート的なそういった部分が好きな方は、彼の個性に惹かれることだろう。

また、現代でホドロフスキー的試みをする映画監督に、
ニコラス・ウィンディング・レフンという監督がいる。
彼はデンマーク出身の監督だが、その配色と衝動的プロットや展開、更には官能的な部分まで非常に彼の影響を感じる監督だ。
私はレフン監督が好きなのだが、全ての映画が面白いと思っているわけではない。
恐らくだが、ホドロフスキー監督作品もそういうタイプの作家なのだ。

前半のウェスタン部分では、様々なバックボーンを持った強敵と戦っていくが、
この展開は現代におけるゲーム作品に非常に近い部分を感じる。
次々と”クエスト”の為に敵を打ち負かすが、主人公は次第にそれに意味を見出せなくなっていく。
この点は、ある種人の持つ普遍的テーマや内向的部分を描いているような気がして、共感できなくもない。

しかし、結局のところアクが非常に強い映画であることに代わりはない。
ズバリ言えば、万人向けではない。
これを好きだという人は芸術家気取りとしか思えないというのが率直な感想である。
また、自宅デートで映画を見る際は、エルトポは観ない方がいい。
(但し、恋人が美大生や芸術家だったら誘ってみるのもありだろう。)

ホドロフスキー作品はまだまだ見ていないので、他の作品も今後見ていこうと思う。

ツタヤ

邦題・英題エル・トポ
評価点数★★☆☆☆
監督アレハンドロ・ホドロフスキー
ジャンルウェスタン
公開年数1970年
上映時間123分

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