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【フューリー】観よ!これが真の戦車道だ!

J.Stone J.Stone

男のロマン、世にも珍しい戦車映画が登場!
激しいバトルと戦争という残虐性を前面に出した戦争アクション。
今回はそんなフューリーという映画を語っていこう。

何故か珍しい戦車映画の一本

2014年公開の映画『フューリー』
この作品は近年稀に見る戦車映画だ。

兵士モノ、潜水艦モノ、戦闘機モノなど、戦争映画の中でも様々なジャンルがあるが、これはとても珍しい戦車映画だ。
そう、何故か戦車映画というのは非常に少ない。
そんな貴重な映画フューリーを語っていこう。

極限のアトラクションへと、現代人を誘うフューリー号という装置

物語は第二次戦の欧州米独戦線を舞台に、一人の新前戦車兵を主人公に展開する。

銃でなくタイプライターしか”撃った”ことがないという現代にもありがちな、極限知らずな普通の青年。
それが、第二次戦最大規模ともいわれた欧州戦線に放り込まれ、戦車という閉鎖空間の中で世界を目の当たりにしていくという流れだ。

観客のほとんどは戦場を知らない。
故に、この無垢な主人公の視点にしっかり入り込み、まるでアトラクションで体感するかのように、戦場の惨劇を次々と目の当たりにしていく。
特にドンパチアクションの戦車映画を見たいであろう若き男共は、残虐性と救いようのない絶望感にいきなりさらされ、冒頭数十分でこの映画の本質を理解する事になる。
紅茶など飲んでいたらさぞ血の味がする感覚に陥る事だろう。

ウォーダディーとノーマン、父と息子、過去と現代

ブラッド・ピット演じる戦車隊長のウォーダディーは、読んで字のごとく戦場の父親的な存在だ。
開始早々戦車小隊の隊長を任され、撃たれたら最期という戦車という棺桶の中で、兵をしっかりとまとめあげている。
そして同時に、ノーマンという新兵においての父という意味も持つ。

しかし、それだけではなく、実はもう1つの面を持つ。
ノーマンという舞台装置は、現代人を差す。
戦場など知らず、残虐な世界もほとんど知らず、本と情報に囲まれ、パソコンというタイプライターを打つまさに現代人。

それに対し、ウォーダディーは、戦争をしっかりと味わったいわゆる戦前世代。
そのウォーダディーは、現代人に戦争映画という隠喩を通し、生命に対する何かを訴えかけているように感じる。

ノーマンのマシンというあだ名にもセンスが光る。
現代人は科学的、論理的な教育を受け、間違いなく過去の方よりも頭が良いのは事実であろう。
しかし、戦争という悲惨さ、人の痛みは忘れて行っているのも現状だ。
ゲームをやれば、簡単に人を撃って殺せる。死など安いものになりつつある。
故に現代人の象徴であるノーマンは「マシン」なのである。ある意味皮肉であろう。

現代においても戦争は変わっていない。終わりもしない。
若者は生が何であるかを理解する前に、大人の道具とされ、今も死に続けている。
一見戦争屋に見えるウォーダディーは反戦的なメッセージをかもしだしている。

故に、ウォーダディーは冒頭から若者の死を見てひとり頭を抱える。
ノーマンに説教した後も、悲しげな表情を訴えている。
死なせないために、生きさせるために鬼にならねばならない父の苦悩が伺えるのだ。

また、これはまるで父が息子に過去を語り継いでいるようにも映る。
事実、劇中で何度も主人公を息子と呼び掛けているシーンがあるはずだ。
(筆者は英語音声・日本語字幕版を視聴しているので、吹き替えだと多少変わっているかもしれない)

そして、全てを見せたあと、観客(ノーマン)は、英雄として称えられ、小さな窓から眺めるだけの世界に押し込められ、
このフューリーというアトラクションから退場させられる。現実に戻される。
しかし、見終わった後…その『英雄』という言葉の薄っぺらさに疑問を抱くはずだろう。
そう思ったとき、あなたはフューリーというアトラクションの真を捉えたと言っても過言ではないのではないか。

タイトルや戦車の名前であるフューリー。
最初は主人公が抱く、戦争への怒りの事かと思った。
しかし、最後に抱くのは人々がいかに戦争を軽く見ているかという事ではないかと思った。

フューリーの描く怒り(フューリー)の規模は実はもっと大きなものなのではないだろうか。

シャーマンvsティーガーという夢のバトル!

さて、ここからはロマンの話だ。
カッコいい戦車バトルの話をしよう。

なんとこの映画は、本物のティーガー戦車を使用した派手なアクションが売りだ。
まるでスターウォーズの様に光線のような銃弾が飛び交い、
車両戦闘という一見地味そうな設定も、的確な命令描写と、背後取りの緊迫感で強烈に見せつけている。

この2台の戦車が何なのか分からない方に簡単に説明すると、
シャーマンとはアメリカ軍の戦車であり、ティーガーはドイツ軍の戦車である。
ティーガー戦車は当時最強と謳われた強力な戦車であり、現代の主力戦車の走り的な存在でもある。
あまりにも頑丈すぎた為か、これを倒すのにはシャーマンが10台必要だともいわれたほどだ。

事実、劇中でもアメリカ軍の戦車があっさりやられていくのがわかる。
ドイツの工業力は素晴らしいのがうかがえる。
まさにドイツ兵器好きにはたまらない映画なのだ!!

あと、戦車がどうしてケツが弱いのか?
戦車というのは正面、側面、背面、天面の順に装甲が薄くなっている。
全面に重装甲などしていたら動けなくなってしまうからである。
戦争映画でヘリや攻撃機にハチの巣にされる戦車の絵があるとおもうが、これはまさに天面が弱点だからである。

また補足だが、戦車の正面装甲は基本的には自分の砲弾クラスのモノが直撃しても耐えられる設計になっていることが多い。
故に、口径の大きな戦車のほうがより頑丈であるのだ。特にこの時代は。
尚、劇中でも使われるパンツァーファウスト。戦車砲じゃないのに何故戦車を倒せるの?と思うかもしれないが、
これは成形炸薬弾(HEAT)だからである。…と、まあこんな感じでややこしくなるので今回は割愛する。

真の戦車道、フューリーを観よう

いかがだっただろうか?

可愛いヒロインのアニメも良いが、
現代への問題定義も含めたド派手な戦車アクションを楽しむならまさにこのフューリーが打ってつけだろう。

これぞ戦車道!ミリタリー好きなら残虐性も理解しやがれってんだぃ!

あと、ブラピはやはりカッコイイ!!

ツタヤ

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