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【スナッチ】バッカーノを生み出した群像劇の新たな1ページ

J.Stone J.Stone

英国の奇才、ガイ・リッチー監督が送る、マヌケばかりの犯罪コメディだ。
『群像劇』というスタイルが得意な監督であり、この作品も群像劇というスタイルを徹底的に洗練させたものである。
とにかく濃すぎる登場人物たちによるキャラ重視の作風と人物の行動は、日本の漫画やアニメーションのスタイルに通じるところがある。
そんなスーパーマヌケ映画、スナッチを紹介していこう。

モシナラ映画レビュー!

今回紹介する映画はコチラ!!

『スナッチ』
英国の奇才、ガイ・リッチー監督が送る、マヌケばかりの犯罪コメディだ。

実は以前の「オープニングが良い映画~」という記事で既にこの映画を取り上げていたが、
改めて掘り下げながら紹介をしていこうと思う。

複数の登場人物が同時進行で動き、1つの収束点に向かっていくという
“群像劇”というスタイルが得意な監督であり、この作品も群像劇というスタイルを徹底的に洗練させたものである。

とにかく濃すぎる登場人物たちによるキャラ重視の作風と人物の行動は、
日本の漫画やアニメーションのスタイルに通じるところがある。
よって、洋画を見たことのない人でもすんなり入っていける映画に仕上がっていると思う。
では、そんなスーパーマヌケ映画、スナッチを紹介していこう。

あらすじと概要

フォーフィンガー・フランキー率いる強盗団が86カラットという大型のダイヤモンドを盗んだことから物語は始まる。
ダイヤ強盗を指示したボスにダイヤを届ける途中、フォーフィンガー・フランキーは小粒のダイヤを売るためにロンドンに立ち寄る。
しかし、そのダイヤを我が物にしようとするボリス・ザ・ブレイドの策略により、窮地に陥っていく。

一方、裏ボクシングのプロモーターであるターキッシュとトミーは、ノミ屋であり裏社会のボスであるブリックトップとのトラブルに巻き込まれ、
パイキーという放浪集団のミッキーと出会い、彼をボクシング選手として八百長に利用する。
だが、天才的な腕を持ちながらも癖の強いミッキーが更なる油を注いでしまい、トラブルは加速する。

ギャンブル好きという逆手を利用した策略と知らずに裏ボクシングを見に行ってしまうフォーフィンガー・フランキーと、
彼を襲うために雇われた3人組の黒人。
更にそのトラブル回避のために雇われたブレットトゥース・トニー等、悪い奴らがどんどん一点に集まってくる。
そしてその中でダイヤモンドの行方は二転三転していく―

という、ごちゃごちゃごちゃごちゃと人物が出てきては波乱に陥るという大変忙しい内容である。
初見だと「お前誰だっけ」状態になりやすいタイプの映画ではあるが、
アクが強い上にマヌケという笑うしかない人物ばかりで、突っ込みを入れつつ笑って終わってしまう吉本新喜劇的な映画でもある。

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出典:http://www.empireonline.com/movies/snatch/review/

ガイ・リッチー作品は…初期~中期あたりは特にだが、世界観や映像美よりも登場人物に重きを置いた作風であるため、
チープな絵があったりもするが、日本になじみ深い漫画的な作風である。
それ故に、後の日本の漫画やアニメに取り入れられたこともあって、非常に見やすいタイプの映画ではないかと思う。
最近では成田良吾著で、アニメ化もされている「バッカーノ!」や「デュラララ!!」などに本作の影響を感じる。
(…というか、成田氏本人がガイ・リッチーのファンであることを公言していることで有名である為当然である。)

また、当時はまだ無名に近かったジェイソン・ステイサムが出演している。
今ではバリバリのアクションスターになってしまったが、実は初期のころは結構マヌケな役を演じることが多かった。
映画「アドレナリン」では、彼の初期っぽさを感じたが、その原点がこのあたりにあるのだ。

尚、ステイサムのデビュー作はガイ・リッチーの初期作品である「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」であるが、
実は2005年の「リボルバー」あたりまで、ガイ・リッチー作品の常連俳優であった。
ステイサムが好きな人は特にガイ・リッチー作品を見てみるといいだろう。
まあ、とりあえず「スナッチ」を最初に見ることをお勧めする。一番取っつきやすいと思うのでね。

では次に、この映画の見所や面白さを取り上げていこう。

登場人物が濃すぎる!

映画を語るうえで映像を語らねば始まらないが、
この作品に至っては登場人物から語らねばならない。

なぜなら、どいつもこいつもマヌケでアホでバカでクソッたれ、
その上濃すぎる自我を持ったどうしようもない連中ばかりだからだ。
しかもそんな奴らがうじゃうじゃと出てくるもんだから、大変忙しい。
そんな人物のキャラクター紹介をまずはしなければ話が進まないのだ。

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出典:

ターキッシュ

裏ボクシングのプロモーター。
飛行機事故が名前の由来で、口癖は「ドイツ兵」。
物語をまとめるというある意味主人公的な存在だが、どこかマヌケ。
役者がステイサムなのに強くもなさそう。むしろ弱い。頭髪も薄い上に頭もやっぱり弱い。

トミー

ターキッシュの相棒で、スロット店を経営。
どこか抜けており、常にドジを踏んで怒鳴られているが、結局仲が良い。
自分の名前はトンプソンサブマシンガン”トミーガン”から来たといっているが、
本当は19世紀のバレエダンサーが名前の由来。
貧弱で情けないヘタレ男だが、物語の終盤で意外な活躍を見せる。

ゴージャス・ジョージ

ターキッシュの所の専属ボクサー。
OPで名前が出る割に特に出番なし。
やっぱりマヌケ。

ミッキー

訛りがひどすぎて何を言っているかわからないパイキーの一味。
天才的なボクシングセンスを持つが、非常に癖が強くじゃじゃ馬。
犬とかーちゃん大好きなマザコン。というかパイキー全員がそう。
マヌケそうに見えて一番おいしいところを毎回かっさらっていく。
英語版でも吹き替えでも何を言っているかわからない。

“フォー・フィンガー”・フランキー

ギャンブルのし過ぎで指を失ったことからフォーフィンガー。
強盗団の一人だが、ダイヤモンドを裁くついでにギャンブルに誘惑されたことで事態が悪化していく。
聖書を独自の解釈で読んだりする。
重要人物なくせにセリフが最初ぐらいしかない。あとマヌケ。

“ブレット・トゥース”・トニー

一度に6発の銃弾を受け、尚且つ歯で銃弾を受け止めた経験のある殺し屋。
ダグに雇われており、慕っている。
冷酷そうな殺し屋のくせに意外と情けをかけたりする。
デザートイーグルを愛用。やはりどこか抜けている。

ボリス・”ザ・ブレイド”

通称「弾丸をくぐる男」。武器商売をするロシア人。
非常に根性曲がり且つタフで、めったなことでは死なない。
強盗団に彼の一味がおり、同じくダイヤを狙っている。全ての元凶。
武器屋の癖に弾の出ない銃ばかり売りつける詐欺師でもある。
出会ったら不幸になる男第一位。あとやはりどこか抜けている。

ブリックトップ

豚大好きおじさん。口癖は「豚に食わせる」。
裏ボクシングの元締であり、ギャングのボス。
残忍な性格で、気に入らないと殺して豚に食わせる。

アビー

フォーフィンガー・フランキーの雇い主で、強盗を指示した黒幕。
ニューヨークマフィアのボス。
アメリカを愛するが故に外に出るのが嫌いで、トラブルでロンドンに呼び出されたことで機嫌が悪くなる。
やはりマヌケ。

ダグ・”ザ・ヘッド”

宝石商を営み、盗品のダイヤも扱っている。
商売に有利だからと、ユダヤ人のフリをしている。
やはりマヌケ。

ソル

質屋を経営する黒人。
ボリスの依頼でダイヤを狙うことになるのだが…。
やはりただのマヌケ。

ヴィニー

ソルと行動する黒人。適当な性格。
軍用のショットガンを強盗で使おうとしたり、
モデルガンを強盗で使おうとしたりとやはりどこか抜けている。

タイロン

「逃がし屋」のはずなのに車の運転が下手な黒人。
また、体格がでかすぎて車から中々抜けられないなど、色々と残念な人。
盗難車も運転すれば俺の車という発想を持つ。
やはりマヌケ。

その他

返事が被ってしまう双子姉妹、
妙に冷静でハゲのノミ屋のカウンターの女、
ソーセージを焼くのに非常に時間がかかるおじいさん、
ホモの情報屋、マヌケすぎるアビーの部下、
何言っているかわからんパイキー連中数十名とかーちゃん、
あと、なんでも食ってしまう犬…等。

とにかくマヌケで変態が勢ぞろいの映画。
こんな濃い奴が1時間半ハチャメチャやらかすんだから、画面がうるさいのなんの。
ボケとツッコミというコンビが複数出ては入り混じるという構成は
まさに吉本新喜劇を見ているかのような感覚に陥るが、
バイオレンスあり、犯罪ありの洋画のセンスも交じって非常の面白い作りになっている。

ガイ・リッチー節が光る映像センス

この映画は冒頭から面白さを確信できる映画であるが、
その指数として最も大きく影響するのがオープニングである。
まずはこの映像を見てほしい。

OPを利用した字幕での物語の紹介はスターウォーズが先駆けであるが、
登場人物の紹介をOPでやってしまうというのは当時の映画ではなかった試みである。

これもまた実にアニメ的演出なのだが、肝心なのはただ人物を出すだけでなく、
人物のアップで名前を挿入したり、シーン自体を繋げて連続性を持たせることにより、
まるでPVやMVのようなまとまった仕上がりになっているのが最大の特徴であると思っている。

アニメを得意とする日本でもこの手法はなく、斬新かつ分かりやすいOPとして、
本作が現代的映像体験の先駆け的存在となったのは言うまでもない。

ガイ・リッチー監督と手法がよく似た監督であり、ジャパニーズカルチャーに影響を受けている人物として
クエンティン・タランティーノ監督がいる。
タランティーノ監督のOPもまたカッコよく、映像や構成も斬新であったが、彼は古風の映画やB級映画を好む監督なので、
渋みはあるが、過去の引用をふんだんに使ったサンプリング的手法な為、現代的なスタイリッシュさはあまり感じなかった。

それをガイ・リッチー監督が、彼のエッセンスをかみ砕いて再構成し、
スタイリッシュかつ斬新、現代的に仕上げてきたのがスナッチであると私は見ている。

また、この手法をオマージュし、OP映像に使って有名になったアニメ作品があるので余計に馴染み深いものがあるのではないだろうか。
そう、上記で取り上げた「バッカーノ!」や「デュラララ!!」である。

尚、本作は監督の2作目に当たり、まだまだ粗削りだったりする部分も当然目立つが、
若さゆえの鋭さがひときわ目立つ作風で、ひたすらにノリと勢いで圧倒するロックバンドの初期作品のような感覚を味わえる。

また、本作のサウンドトラック選びも非常に良い。
マドンナやオアシスなど、80年代~現代にかけての名曲をふんだんに使っているし、
メインテーマも非常にかっこいい曲に仕上がっている。
映画にハマったらサントラもセットで買ってみるとより深く楽しめるに違いない。

さあスナッチを見よう!

いかがだっただろうか?
休日にとにかく面白い映画が見たい!と思ったらまずスナッチを見ることをオススメする。
また、これが気に入ったら前作や次回作を見てみるのもいいだろうし、
影響元であるタランティーノ作品を見てみるのも面白いだろう。
もちろんスナッチなどに影響されたアニメを見て比較してみても面白いだろう。

近年のガイ・リッチー監督は「シャーロックホームズ」などのハリウッド系の大作を撮っているが、
正直この時期の鋭さを知っていると、失速してきているのが見えてしまうのが悲しい。
どうしても年を取ればスピードやキレは落ちるし、ある意味映画監督の性でもある。
最も映像は洗練されているし、大衆的にはなってきているのだが…やはり物足りない感もある。
そう思うという人は「スナッチ」をまず見てみることをオススメする。

ステイサムの若かりし頃…。
また、キレキレの群像劇を是非ご堪能あれ!

ツタヤ

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