【レビュー】『エースコンバット7』無機質なストーリーが勿体ない

J.Stone J.Stone

エースシリーズ待望の最新作である「エースコンバット7」をプレイしてみてのレビューをしていきたいとおもいます。過去作ファンから見て今作はどう映ったのでしょうか…。特に賛否で分かれる新要素やストーリー、無人機の描き方について評価していきます。

エースコンバット7:辛口レビュー

待望の新作『エースコンバット7』のプレイが一通り終わったのでレビューをしていきたいと思います。
まずは総合評価と、良かった点・悪かった点から紹介していきましょう。

総合評価

ストーリー: ★★☆☆☆
グラフィック: ★★★★★
サウンド: ★★★★★
ゲームバランス: ★★★☆☆
ボリューム: ★★★★☆
総合評価: ★★★★☆

良かった点

  • 壮大で美しいグラフィック
  • 細部まで拘った飛行機のディティール
  • 気流表現や天候表現などのリアルな環境システム
  • 進化した敵機のAI
  • マニューバの実装
  • 全プラットフォーム対応

悪かった点

  • 無機質で置いてけぼり、旧作のファンサービスに徹しすぎているだけのストーリー
  • キャラクターの背景が語られない消化不良
  • 詰め込み過ぎて長すぎるミッション
  • レーザー兵器やジャマーパーツなどの隠し兵装レベルの強武器が普通に登場してしまう
  • 全く熱くなれない無人機戦
  • 単調な対戦だけのマルチプレイ

総合評価:50点

待望の期待作だったエスコン7

最後にナンバリングタイトルが出たのは2007年。
XBOX360で発売された「エースコンバット6」だ。

それ以後も外伝作品や派生作品は作られ、「エースコンバット:アサルトホライゾン」やオンラインタイトルである「エースコンバット:インフィニティ」等があったが、エースシリーズとしての正当続編は実に約10年登場しなかった。
特に、名作揃いで知られるプレステ2の4,5,0、そしてPSPのXのユーザーは今か今かと心待ちにしていた。
中には小学生・中学生でプレイし、待ち続けていていたら大人になってしまった方も多いだろう。

エースシリーズはリアル寄りなフライトシューティングという、なんともマニアックなジャンルなのだが、戦闘中に展開されるユニークで熱い無線ボイスや、やたらとカッコイイテーマ曲やOPなどで一時期ネット上でパロディ作品が乱立するほどの派生っぷりをみせた。
他にはないフライトシューティングのシステムで、プレイヤー(主人公が)がまるでエースパイロットとして戦場を駆け巡っているかのような漢のロマンが体感できるシリーズなのだ。

作中のとあるキャラクターのセリフのようだが…エースコンバットに欠かせないものがある。
「ストーリー」、「超人的な主人公」、「飛び交う無線」…この3つだ。
しかし7は……

無機質なストーリーが勿体ない


出典:https://ace7.acecombat.jp/

まず、何が惜しかったのか。
ズバリ「ストーリー」である。
エスコンシリーズの醍醐味である物語にプレイヤーを引き込めなかったのが非常に惜しく、同時に致命的となる問題だった。

エスコンといえばドラマティックで感動的なストーリーが、毎度楽しみとされているわけだが、今作はどうもパッとしなかった。
その原因の1つが、やたらと繰り返される過去作へのファンサービスだ。
確かにエースシリーズのファンの多くは10年以上待ち続けた。
しかし、だからといってファンの望むのは再び空で最強のエースパイロットとなる事に他ならない。

だが、今作は過去作へのファンサービスの為に、旧作で登場したワードを並べ立てるだけで、結局この世界の人物が何を目指しているのかが見通せなかった。
確かに今作のテーマは、善悪の境界がない現代戦、無人機によって淘汰されつつある有人機というストーリーであったが、その善悪のなさがプレイヤーの共感できる場所をなくしてしまった。
例えば、主人公は作中で正規軍から、無実の罪を着せられ懲罰部隊へと送られる。
しかし、その後あまりにも活躍したために正規軍への復帰を許されるのだが、正直な話…この間に腐りきった軍上層部のやり方を魅せられたプレイヤーは、もはや忠義も正義感も、ましてや軍への思い入れも消し飛んでしまう。
結果としておバカな国のしりぬぐいをさせられているだけに感じ、何の使命感もなくエンディングまで迎えてしまう。

過去作ではプレイヤーが戦う意味を明確にしていた。
特に代表作である5では、裏で暗躍していた黒幕を止め、平和を願う者たちの為に戦うといった使命感。
0では、傭兵として生きるのか、騎士道に生きるのかを自分で決めれはするものの、横暴な敵国を完膚なきまでに叩きのめす正義感。
4やXでも、侵略者から国を守るためにたった1人で立ち向かうという使命感があった。

一方7では、とにかく部隊を転々と移動させられてしまい、更には守るべき国が腐りきっているのを魅せつけられ、その使命感や正義感もなくなってしまうタダの操り人形の気分になる。
正直、この主人公は悪落ちして、自国に引き金を引くテロリストになってもおかしくないレベルで不遇で不条理である。余りにも可哀そうに思えてくる。
事実は私はプレイ中、何度も味方に悪態をつき、さっさとこんな国滅べばいいのに…と、まるで旧作に登場する「国境無き世界」のPixyと同じ気分を感じていた。

そう思う理由は掘り下げられなかった各勢力の内面や、登場キャラクターの思想も関係しているだろう。
結局最後までこいつらは何がしたかったのかいまいちわからぬまま終わりを迎えてしまう点が、余計のそう感じさせる要因である。

ファンサービスに徹し、表面をなぞるだけで、なんの魅力もないストーリーに、私は無機質さと消失感を感じざるをえなかったのだ。

影の薄すぎる主人公

そして次に挙げられるのが主人公の立ち位置である。
「超人的な主人公」というエースパイロットの面がやはりストーリー上薄く感じた。

今作のストーリーは主人公(トリガー)が中心にいない。
これはエスコン6でも同じであったが、プレイヤーが中心にいないことで自分に関係ないことが裏で展開されているように感じ、どうも感情移入ができなくなってしまっている。
よって、好例である強すぎる主人公への賛美や恐怖が語られることは非常に少なく、後半になって都合の良いように使われるだけである。
今作は主人公キャラであるトリガーのエースっぷりは影を潜めているし、一兵士に留まってしまっているように感じる。

過去作5であれば、新米パイロットからラーズグリーズという悪魔的存在へと変貌する超人っぷりが随所で語られるし、
4であればあまりにも強すぎて一目置かれ、Xでは最初から最強設定で、司令部からは敬語で話され、作戦指揮まで任されしまうという徹底的っぷり。
極めつけに0であれば、ムービー中では主人公の事を「鬼神」という異名で呼び、ただ強すぎる人として描かれ、そして持ち上げられる。

一方今作と6は、そういった点が非常に薄く、いずれ忘れられてしまう存在なのかとも感じる。
これはプレイヤーにとっては実に悲しいことであるし、ゲームの中だけでも自分自身が世界のヒーローになれるということを体験できないというのは非常にデメリットであると感じる。
7における主人公は、地味であり、使い走りであり、罪人である。

こういった点から考えると、過去作ファンに対してサービスをするといってワードを並べ立てるよりも、まずプレイヤーをエースパイロットとして持ち上げることに専念してほしかった。
それがエースコンバットの醍醐味なのだから。

無人機戦は熱くなれない


出典:https://acecombat.fandom.com/

さて、ドッグファイトと言えば人間同士の空の格闘戦だが、今作では有人機の時代が終わりを迎えようとしている…という設定である。
よって敵のほとんどは無人機である。
エスコンの醍醐味の1つである敵味方の無線が混線して、追い詰められた敵機が悲鳴をあげるなどといった空戦演出である。
筆者はエスコンZEROが特に好きで、敵のエースパイロットを震え上がらせる演出に燃え、なんども繰り返しプレイしたほどだ。

しかし今作はほとんどが無人機なので、ドッグファイトをしている最中も役に立たない味方が雑談をしているだけで、敵の無線はほとんど入ってこない。
エスコン0,Xから実装された敵をターゲットにしたときに反応が返ってくる無線システムは、今作の世界観によって相殺されてしまった。
唯一、敵勢力最後の人間のエース部隊との戦闘ではこの無線が聞けるのだが、これはゲーム上のほんの一部に過ぎない。
よって、非常に無機質な空中戦に仕上がってしまったのが残念でない。

やはり人間味のない空中戦は寂しいものである。

初心者救済措置がバランスブレイカー


出典:https://www.nvidia.com/

他にも悪かった点で挙げたように、一部強すぎる兵装が登場する。
過去作では隠し武器や隠し機体として登場したレーザー兵器が普通に実在機に実装されてしまった点だ。
レーザー砲、レーザー機銃、レールガンが普通に登場してしまう。
エースシリーズはあくまでミリタリー路線であるのだが、何を履き違えたのかSFゲーにしてしまった。

確かにフライトシューティングは敷居が高く、マニアックなゲームになりがちだが、だからといってスターウォーズにしてしまうのはどうかと思う。
実際、エースシリーズではレーザー兵器=最強兵器という設定なので、当然ながら強い。
レーザーを装備してしまえばミサイルや機銃などタダのオマケになってしまう。
まるでNo Man’s Skyやスターウォーズ:バトルフロント、更に言うならマクロスシリーズのゲームをしている気分になってしまった。
やはりここは今まで通り、隠し武器としてオミットして欲しかったところだ。(あとファルケンも登場しないのが悲しい!)

更に、今作では機体にパーツを装備してカスタマイズができるのだが、この中にもぶっ壊れ性能なものがいくつか登場する。
敵のミサイルの追尾能力を大幅に減らせるジャマー装備、接触時のダメージを軽減する装備、レーザーを更に強化する装備など、この辺りは完全にバランスブレイカーである。
最も、この辺りは各自縛りプレイをすればいいのだが、問題はマルチプレイの存在である。
なんとレーザー兵器はマルチプレイでも使えてしまう。弾速が早いレーザーやレールガンは至近距離での必中武器になるので、ここはやはりミサイルで戦いたかった。
今後の調整で強すぎる兵装はマルチプレイで使えないようにしてほしいものだ。

その他の不満点


出典:http://www.amageblog.com/

それ以外にも、マルチプレイが単調であったり、詰め込み過ぎて消化不良なストーリーの上にある長すぎる1ミッションであったりといった不満要素は多々ある。
特に天候システムは賛否両論であるようで、私は面白いと思ったのだが、新システムを押すばかりに注視してやり過ぎ感が否めないと思った点もあった。
今後、外伝タイトルや派生作品が作られるのであれば、こういった改善点がいかされると良いと思った。

エースコンバット7の総括をするのであれば、今作は「エスコンファンへのファンディスク」である。

面白い部分もあった


片羽の妖精仕様が使えるのは熱い!

さてかなりディスっているように感じるが、面白い部分も多々あった。
天候システムは今までなんの不自由もなく飛べた空に若干の制限をかけてリスキーにしてくれたし、
敵のAIが進化していて、まっすぐ突っ込んできてくれなくなったり、回避軌道を取ったりと無機質なストーリーと反して非常に人間臭さも感じられた。
もちろん無人機に関しては人間が乗っていない前提の軌道が用意されていたりと、有人機・無人機の動きの差別化がされているのも面白いポイントであった。

また、グラフィックは相当な進化を感じられ、精密に作られた戦闘機のディティールは素晴らしかった。
前作プレイヤーのほとんどがプレステ2であることを考えると、当然感じてしまう要素ではあるのだが、10年分の技術の進化を感じた。
他にも、全プラットフォームに対応し、PS4/XBOX/PCと展開してくれたことがうれしかった。
特典要素であるエスコン5も今後PCに移植してくれたらうれしいので、今後に期待することにしよう。

一方で、VRモードは非常に面白いという意見が多くみられます。
没入感がある、酔わない、そして主人公はメビウス1という点から非常に評価が高く、こちらが本編であるといった意見も。
今作はむしろ新システムを生かしたVRタイトルの方が目玉かもしれませんね。

以上がエスコン7をプレイした、旧エースシリーズファンの感想でした。
今作が初めてのエスコンになる人には純粋に楽しめるタイトルだったのかもしれませんが、やはり私にはベルカの空が一番合っているようでした。

ミリタリー好きとしては不満要素が残りますが、SF好きであったり、
スターウォーズやマクロスが好きな方にはオススメのタイトルかもしれません。

出典:Ace Combat7

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