【Wasteland3】海外でも真のフォールアウトと大絶賛![レビュー]
CRPGファン必見、ポストアポカリプスの傑作”Wasteland”の最新作が堂々登場。Falloutの生みの親”Brian Fargo”率いるinXile Entertainmentが送るWasteland3のプレイレビューをご紹介。
待望の新作ウェイストランド3
2020年8月28日に発売となったWasteland3。
初代ウェイストランドは1988年にInterplayが開発したCRPGで、Falloutの原型になった作品…というか姉妹作品です。
Wastelandのフランチャイズは旧Interplay時代にEAが持ち続けたため、同スタッフがやむなく作り上げたのがFalloutですが世界観も非常に類似しており、大絶賛。
その後、2014年にinXileがクラウドファウンディングの力を借りてWasteland2が発売され、シリーズが復活。今作はその6年ぶりの新作となります。
今作は前作とは打って変わって開発元のInxileがマイクロソフトの傘下に入ったため、制作規模が大幅アップしており、グラフィックや演出面もより磨きがかかっている作品となっています。
筆者も待ちに待ったWasteland3ですが、非常に満足のいくゲーム内容となっていました。
海外ではこれが俺たちのやりたかった世紀末ゲームだ、真のFallout4だという呼び声も強く、ファンの期待通りの作品になっていたと思います。
さて、本作のプレイが終わったのでプレイ後レビューをしていきたいと思います。
尚、本作は日本語が含まれていなかったので、翻訳によりプレイしております。その関係で背景が読み取れていないケースもありますのでご了承ください。
またネタバレも含まれますので、ネタバレが嫌な方や未プレイの方はプレイ後にお楽しみください。
まずは総合評価からいきましょう。
総合評価
ストーリー: | ★★★★★ |
グラフィック: | ★★★★★ |
サウンド: | ★★★☆☆ |
ゲームバランス: | ★★★★☆ |
ボリューム: | ★★★★★ |
総合評価: | ★★★★★ |
大きく進化したシナリオ
まずシナリオは前作よりも格段に複雑さを増し、密度の濃い内容となっていました。
核戦争後の世界で最後の法執行機関”デザートレンジャー”が、旧世界の秩序を取り戻すために奮闘するという内容はお馴染みですが、レンジャーの正義がもはや正義でなしえない世界になりつつある部分が描かれます。
前作Wasteland2は、1で回収しきれなかった部分を延長としてやった内容が多く、ストーリー自体はさほど複雑ではありませんでした。
人間vs機械の決戦、秩序vs無秩序を描いたストレートな作品に仕上がっていたと思いますが、反面1のネタも多くバックグラウンドを自分である程度読んでおかないと入り込めない部分もありました。
一方本作では、前作で一通り機械との戦争が終わっており、新たな舞台でデザートレンジャーが勢力拡大と秩序を取り戻そうとするのですが、立ちふさがるのはただの蛮族ではありません。立ちふさがるのはそれぞれの正義なのです。
舞台となるコロラドを支配するのは巨大なハンマーを振り上げる武将の様な男(総主教と呼ばれる)で、現在は一族王政によって支配されていることになっています。
王政によって統治される世界で、実質上の城下町となるコロラドスプリングスの市民からは絶賛され、親衛隊や保安官など法機関は存在しますが、この王が裏ではギャングと繋がって奴隷売買したり汚い事をやっており、街の外の難民からは非常に恨みを買っているという背景。更に総主教の息子たちである3人はサイコ野郎で、家出してカルトに加担したり、人を虐殺しまくって肉を喰らったり、ギャングを率いたりとやりたい放題。そんな息子たちを跡継ぎだからと法的に裁くこともなくほったらかし。
レンジャーはそんな偽りの秩序しかない王政となっているコロラドで、かつてのアメリカが行っていた民主的法治国家を作ろうとしており、主人公の選択によって郷に従いコロラド王国と同盟となるのか、対立して法治国家として体制を立て直すのか…もしくはそれ以外を選ぶことになります。
各勢力も、ギャング(レイダー共)やカルト集団、ロボットなど様々ですが、皆一様に思想を持っており、各勢力同士の相性があります。
例えば王政とギャングは繋がっており、ギャングを潰せば王政が傾く。だがギャングは難民や他の地域を侵略しており、人命を取って王政崩壊を望むか、王政秩序を維持するかを選ばなければならない。カルト集団とロボットは対立しており、そのカルトは石油資源を牛耳っているが、カルトと敵対すれば石油は手に入らない。ロボットは前作でレンジャーと対立した背景からレンジャーを毛嫌いしてるが、一部では和解ができそう(だが裏切るかもしれない)。ギャングはギャングで派閥争いをしている。…等、各勢力がコロラド内で入り乱れており、全てを救う事は出来ない複雑に入り組んだ情勢になっています。
更に複雑さはコロラドの中だけに留まらず、デザートレンジャーという組織にも言えるのです。
デザートレンジャーは機械軍団との戦いを終え、人類を終末から救いましたが、前作の戦いでレンジャーは疲弊してしまいます。
そこで必要になるのが勢力の拡大と、法秩序の拡大です。
つまり戦いは単なる武力だけでなく政治的な面にも突入し、結果としてレンジャー内にもタカ派とハト派が生まれることになります。
支配地域を嘗てのアメリカのやり方で法治国家にしたいタカ派、地域と穏便な関係を保ちながら拡大と法の復興に努めたいハト派と二分。タカ派には機械戦争を生き延びた屈強なレンジャーの精鋭が参加しており、ハト派には現在レンジャーを率いる将軍を慕うモノが多くいます。対立はレンジャー同士でも起こり始めるのです。
つまり、法の下に行動していると不利益を被る奴が必ず出てきて、戦後復興で築き上げた文明を破壊する可能性も出てきます。同時にレンジャーも分裂する危険があり、最悪疲弊したまま崩壊を招く危険もあるのです。
1つのルール、1つの秩序の元に集結しようとすると、最後は必ず対立が生まれてしまう人間の性と歴史が描かれているわけです。
かつて日本も戦後復興の際には闇市やヤクザが民を束ねていましたが、復興がひと段落していくにつれて法治国家となり力を増した彼らは排除される側になっていきました。
アメリカでも西部開拓時代には無頼の者であるガンマンたちが時として市民に手を貸しましたが、法治国家になるにつれて体制に取り込まれないガンマンは排除されていきました。
本作は非常に歴史的な支配と崩壊の物語ともいえるのです。
同時に、恐らく本作のテーマは今現在置かれているアメリカの情勢ではないかと思います。
かつては正義の名のもとに他国の情勢に介入し続けてきたアメリカですが、それによって本来あった秩序や価値観をことごとく破壊。かえって混乱を招くケースもありました。
近年はアメリカ国内ですらアメリカの掲げる正義が通用しなくなっており、かつての正義が毒になっています。
アメリカが絶対権力だった時代は終わり、世界のパワーバランスは崩れ、正義の形も変化していきます。
本作Wasteland3は、そんな激動のアメリカに対する問題定義ともいえるシナリオとなっているのです。
同時に、ウイルスによって混乱した今、経済不況で世界恐慌が加速する今、米中対立の激化で核戦争勃発の可能性が上がった今、仕事や生活スタイルなどあらゆる価値観や様式が激変している今……あらゆる制御が効かなくなり、混沌とした今の時期に偶然ながらもこの作品を世の中に投下したのはものすごいタイミングであると感じています。
スーパーマン どこに行ってしまったんだ
すべてがおかしくなっちまった
鋼鉄の男 パワーを持つ人間が 刻一刻と力を失っていく
※本作のテーマ曲、Land of Confusion – Genesis より
テーマ曲であるLand of Confusionの内容通り、混沌の地を住みよい街にするために戦うが、それすらが新たな混乱を招いてしまうのだ。
進化したゲームシステム
ゲームシステムも前作からかなり進化しています。
まず、一番大きな変更は重量と個別インベントリの撤廃です。
前作では、キャラクターごとにインベントリと積載重量があり、アイテム所持制限がありました。
これにより筋力の高いキャラクターがより多く荷物を持つなどの戦略性はありましたが、後半になると装備重量がかさみ、荷物整理に多くの時間を割いていました。
今作では重量と個別インベントリを大胆にも廃止し、荷物整理の時間をゲームプレイに当てられるようになっていました。
これに伴い、後半になり装備が大型化・重量過多にならずに済み、尚且つ荷物の為に筋力を伸ばしたり、アイテムを捨てたりしなくて済みました。
更に、消費アイテムを買いだめしても重量がないので、思う存分買って使えるようになっています。
次にあげられるのがアビリティやスキル振りの変更。
本作はスキルを振る際に必要なスキルポイントが減った為、前作に比べてインテリ特化でスキルポイントを多めに取得する必要がありません。
更に、FalloutのSPECIALに代わる”アビリティ値”は、レベル2毎に振れるようになっており、初期のアビリティで使い勝手が決まってしまう事はなくなりました。
他にもインテリがスキルポイントの取得量に関わらなくなっているなど、ポイントはどのキャラでも一律になっています。
スキルやアビリティの能力も、それ1つで強力にならないようになっており、戦略性があります。
会話画面でも、必要スキルが伴わない選択肢は隠される等の変更があり、スキルを満たしていないと先の展開が見えなくなっているので、おのずと説得系スキルも増やしたくなります。
イベントキャラには相手の立ち絵が3Dで表示されるなど、演出面も強化。現代的なアプローチが多く使われます。
他にも、マップオブジェクトも色々分かりやすくなっており、ワイヤーが可視化されて電気のスイッチを弄ると何処に影響されるのかということが非常にわかりやすくなっています。
よって、テキストが理解できなくてもマップの仕掛けや謎を解くのがやりやすくなっています。
各勢力の評価もメニューから見やすくなっており、どの派閥を中心に行くかも明確にしやすくなっています。
進化したバトル
中でもバトルシステムは大幅にブラッシュアップされています。
前作ではイニシアチブが高いキャラクターから順に行動でき、尚且つ遠距離でアクションポイントが高ければ有利という偏ったバランスでした。
敵のアーマークラスより武器貫通力が高くなければダメージは通らず、一部の低貫通力武器は役立たず。武器はジャムを防ぐためにマガジンMODが必須でしたが、それを装備できないショットガンは産廃という偏り。
しかし今作では全体的に命中率が下げられ、アクションポイントを盛り辛くなったので、手数ゴリ押し先方はできなくなっています。
更に、戦闘スキルが追加され、命中率は下がるが大ダメージを与えるなど、XCOMのような戦略性が生まれています。
しかも敵味方双方が撃たれ弱くなったので、戦闘のテンポが速くなっており、身を晒す危険が高まっています。
アイテムにも攻撃アイテムが多数追加され、グレネードだけでなく、タレットやロボット、デコイなどの様々なアイテムが増えています。
これによって囮のロボットを展開している隙に裏に回り込んだり、スモークグレネードで身を隠したりといった、防御手段を取らないと正面からの打ち合いだけでは辛くなっているので単調さはありません。
アーマーはダメージ減衰効果が減っており、低貫通力の攻撃でも使えないことはありません。
それ以上に、武器毎の精密射撃が”ストライク”というFFのリミットブレイクのようなチャージ系必殺技に変更され、このストライクが武器によって異なるので武器の使い分けがかなり重要。
ライフルやピストルは部位攻撃が出来たり、ショットガンやサブマシンガンは貫通力が低い代わりに薙ぎ払いができるようになっていたりと、単体火力に優れるモノ・範囲攻撃・連射の手数で削るモノなど使い勝手が様々。前作で猛威を振るったスナイパーライフルは、消費APが高く、装弾数が激減したためにスナイパーのみで無双することは困難になっており、単一のユニットで全てを解決することは難しくなっています。
これらによって、よりチームで戦っているという感覚になれるわけです。
一方で、アーマー値の高い装備をするには筋力が必要となり、体力を底上げするにも筋力がいるので、筋力を鍛えていない場合又は軽装の場合は敵の攻撃を如何に喰らわないかがカギとなります。同時に、敵の攻撃を防ぐにはかなりアーマーを盛らないといけないので、中途半端な防御力はすぐに打ち砕かれることでしょう。この辺りの敵の攻撃力・貫通力は数値化されていないのでやって覚えるしかありません。
不満点
とは言っても、全てが完ぺきとは言えません。不満点はあります。
まずゲーム本体の最適化不足。近年のゲームはどれも最適化が間に合っていませんが、こちらもそうでした。
特にメモリ処理が下手なのか、SSDに入れても読み込みが高速化することはありませんし、スペックを食ってなくても何故かやたら重かったりします。
発売翌日に即座にアップデートが入りましたが、異様に重たく、クラッシュ・エラーしやすいのは近年のタイトルだなーという印象です。
また、武器MOD・防具MODが使い切りになり、取り外しが不可能に変更された為、MODを装着するタイミングで迷うのも難点かと。
前作は取り外しができるので、購入したMODをスキルがあれば使いまわせたのですが、今作では強力なMODの使うタイミングを誤ると二度と外せなくなってしまうので、実質最後の方まで使うのを躊躇ってしまいました。
更に、使いきりでありながら再販はされず、分解によって装着物を回収できません。また分解時に一定確率でMODが入手できるというPerkはあるものの、前作のように出現確率が可視化されておらず、確率もスキル値に比例しておらず、尚且つ異様に偏りがあるので、同じパーツばかりが溜まっていくという事態に。特にスコープとマガジンが出ず、カスタマイズはあまりできないという印象。確率勝負なので結局リセマラになります。
せっかくスキル値があるのですから、この辺りはスキル値に応じた確率で出現or回収物を選べる・装着物は分解時に全て外れる・スクラップでクラフト可能などで対処できたのではないかと思います。
ちなみに、防具MODに関しては購入・クレート以外で入手はできないので、余計に使うのを躊躇う傾向にあります。
あと、不満ではないですが、作曲家のMark Morgan氏のキレが以前よりなくなっていたのが若干寂しかったです。
もうちょいゴリゴリのサントラでもよかったかなー。
難易度は高めだが、とっつきやすい
難易度は高めです。割とあっさり死にます。
最低難易度が実質ノーマルなので、慣れない人は一番簡単モードでやりましょう。
また本作からマルチプレイも対応しており、オンラインマッチングも可能です。
2人プレイですが、別の誰かと相談しながら物語を進めてみても楽しいかもしれませんね。
マップも前作ではアリゾナとカリフォルニアと2つありましたが、今作は1つです。
コロラド1つしかありませんが、その分密度は高く、じっくりと遊びつくせる内容になっています。
翻訳ソフトの精度もあがっているので、翻訳片手にじっくりと荒廃後のアメリカ史を堪能してみてはいがかでしょうか。
出典:inXile Entertainment/Wasteland3
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